17Jun
気分がパッとしなかったり、不安や心配事があったりするとき、頭がうまくはたらかないと感じることはないでしょうか。
気分や感情と、思考力・判断力は一見すると関係がなさそうに思えますが、実は密接なつながりがあります。
視床下部のはたらき
脳には「視床下部」という部分があり、ちょうど、脳の真ん中の奥に位置しています。視床下部には、自律神経系、感覚系、運動系の三つの神経系統が全て集められており、そこから大脳へ信号が伝えられています。つまり、神経のターミナルのようなところで、人間が生存のために必要とするあらゆる情報は、いったん視床下部を通過して大脳へ届いています。
視床下部では、体温や食欲、睡眠、ホルモンをはじめ、生存に必要なあらゆることが調整されています。ここで特に重要なのが、視床下部では「情動」を発生させるという点です。情動というのは、「感情」を広い意味で表した医学用語です。例えば、メニューを見て「美味しそうだ」と思ったり、尖っているものを見て「あぶないな」と思ったりする、単純な気持ちのことです。そこから、「この料理を注文しようかな」とか、「これはあぶないからキャップをしておこう」といったことを考え始めるわけですが、このはたらきは大脳が担っています。つまり、情動は視床下部が、その後の複雑な思考は大脳が行なっているということです。
情動と大脳のはたらき
例えば、何かピンチな出来事が起こったとします。すると、「いやだ!」、「マズイ!」という情動が生まれるものですが、実はこのマイナスの情動が視床下部から大脳に伝わると、大脳のはたらきが制限されるという特徴があります。つまり、マイナスの情動によって本来の能力を十分に発揮しにくくなるのです。焦っている時や不安を抱えているとき、集中力が低下しているように感じられるのは、この仕組みゆえのことといえます。気分が上がらないときや緊張しているときほどミスが続いたり、思った成果が挙げられなかったりすることがありますが、決して自分を責める必要はなく、そのような仕組みになっている、ということなのです。
ある状況が苦手というとき、①その状況に対して気分が曇る、②うまく対処ができない、という2つに分解できます。「試験」や「本番」が苦手という人や、人と話すことが苦手という人など、いろいろなケースがありますね。こうした苦手を克服したいときに役立つのが、練習を何度も繰り返す方法です。本番に似た状況をつくって、本番のつもりで何度も練習してみたり、人と話すことが苦手な場合、ショッピングの時に店員さんと一言二言話すようにしてみたり等、小さな練習を繰り返すことで、その状況に対して“免疫”を作ることができます。不安や緊張感などのマイナスな情動が大脳に伝わるのを防ぐことができ、苦手な状況でも実力を発揮することが可能になっていきます。
決して無理はせず、自分にとって簡単にできそうなところから始めてみるのが良いですね。
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