9Apr
前回のコラムでは、依存症のお薬についてお話ししました。
今回は、日本で使われている、アルコール依存症の薬について触れていきます。
全く飲む気が起きなくなる
日本では現在、アルコール依存症の薬が2種類あります。その作用は、アルコールを全く飲みたくなくさせる、というものです。
処方を行なっていてはっきり感じるのが、みなさん、アルコールを飲みたい、という気持ちが全く湧かなくなった、ということです。この効果にはとても驚かされます。
では、これでアルコール依存症の治療は良いのか、といえば、実は全くそうはいえない現状があります。アルコールを飲みたいために、この薬を飲むのを止めてしまうという例がいくつかあるのです。
“飲酒の意味”という面
依存の構造が、単に、依存の対象だけが原因となっているのであれば、依存の対象となっている物質、たとえばアルコールや砂糖、ゲームやギャンブルできる環境を強制的に取り上げてしまえば良いはずです。
しかし、それでは治療がうまくいきません。あるタイミングで、またそれが出来る環境になったとき、始めることになるからです。
これは、依存の対象物が抜けたとしても、依存の回路は残り続けていることを意味します。
飲酒という行動に、「ストレスを和らげるもの」という付箋が貼られているようなイメージで、飲酒=ストレスからの脱出、という意味が、頭の中に強くある状態が、依存の一つの面だといえます。
「とにかくアルコールそのものを摂取したい」という気持ちだけでなく、「不快な気持ちをなんとかしたい、そのために飲酒が必要だ」という気持ちもあるのです。
依存の治療では、薬を使ったり、環境を変えたりするなど、対象物を遮断しつつ、
例えば、ストレスを感じたときに、「今、自分は何をどのように感じているか」と、
自分が今この瞬間に受けている感覚や感情がどんなものなのか、ということに気を向けるのも重要になってきます。
依存についてお困りの方や、ご家族についてなど、
お一人で抱え込まずぜひご相談ください。