4Jul
① 気分が落ち込む
② 興味や関心が低下する・意欲が湧かなくなる
③ 仕事や家事が困難になり、日常生活に支障が出る
「うつ」は以上のように段階的に進行していくことが知られています。
最初の症状として、訳もなく悲しくなったり、罪悪感や不安感が強まったりするなど、気持ちの変化として現れやすいと考えられています。
しかし、私は最近、この進行のプロセスが実は逆なのではないかと考えるようになりました。
つまり、
① 仕事や家事といった日常生活が難しくなった気がする
② 興味や関心が低下する・意欲が湧かなくなる
③ 気分が落ち込む
というように、最初に、機能的な面が低下し、気持ちの変化は最後に起こるのではないか、ということです。
うつ初期症状としての「認知機能低下」
・仕事が複雑になったわけではないのに、こなすのが難しくなった
・業務に必要な集中力が足りなくなった
・頭に「もや」がかかったような感じで、判断が鈍くなった感じがする
・忘れやすくなった、覚えるのが難しくなった
・行動に移すまでに遅れてしまう
日常生活を送る上で、「あれ?」と、このような変化に気づき、それが実はうつだった、というケースが多いのです。
仕事や家事を遂行する上で必要な、集中や判断、記憶、理解といった認知機能は、さまざまなことが原因となって低下し得ます。
身近なものでいうと、睡眠不足やストレス、栄養不足といったことがありますね。特に睡眠は、翌日のパフォーマンスに大きく影響することを皆さん実感しているのではないでしょうか。
認知機能が低下する疾患には、血管性認知症や感染症、外傷、内分泌障害、薬物や栄養障害などがあります。これらは、原因を取り除くことで、再び以前の認知機能の状態、あるいはそれに近い状態に戻すことができる、可逆性があります。
アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、前頭側頭葉変性症は、変性疾患と呼ばれていて、まだ原因がよくわかっていません。
うつも、認知機能を低下させる原因の一つなのではないかと考えています。
しかも、これまでは、うつが進んだ最後の段階で、認知機能の低下が現れるといわれていましたが、実は、認知機能低下は、うつの最初にごく些細な変化として現れるのではないか、と思っているのです。
仕事は続けられているが、なんだか本調子ではない、というわずかな変化を感じるかもしれません。
「気分が落ち込む」、「やる気が出ない」、という自覚症状で受診される方で、診察をしてみると、実は休職が必要な状態にまでなっていた、というケースが多いのです。
うつの方の認知機能低下に対して効果を発揮する薬剤もあり、治療は早ければ早いほど、治りやすさが変わってきます。
仕事や家事など、日常生活を送っていて、「あれ、なんだかいつもの調子とおかしいな。」と思うことがありましたら、ぜひ一度受診してみてください。